【省令解説】食品リサイクル法の新方針が示す次の10年
- k.fukatsu
- 10月10日
- 読了時間: 4分
― 現場発の循環づくりへ、アーステクノの視点から ―
2024年6月に発表された食品リサイクル法の改定方針を経て、2025年3月(令和7年)、「新たな基本方針」が正式に公布・施行されました。
今回の改定は、これまでの延長線上ではなく、“次の10年の循環のあり方”を見据えた再設計です。
2030年に向けて、事業者一社一社の努力を超え、サプライチェーン全体での協働を求める内容となっています。
事業系食品ロスの削減目標 ― 「半減」から「6割削減」へ
今回の改定で大きな変化は、事業系食品ロスの目標が「半減」から「6割削減」へと引き上げられたことです。
2000年度比で2030年度までに60%削減を目指す、より高い目標が設定されました。
これまで個社単位で管理されていた削減努力が、「サプライチェーン全体の目標」として一体的に求められる点も特徴的です。
食品ロスの責任を特定の段階に押し付け合うのではなく、製造・流通・小売・外食が連携して解決に取り組む方向に舵が切られました。
この考え方は、アーステクノがこれまで提唱してきた「地域単位での循環設計」「排出から再資源化までの一貫支援」とも強く響き合うものです。
商慣習の見直しが正式に省令化 ― 現場運用の変化が進む
改定省令では、食品ロス削減に向けた具体的な行動指針が新たに明記されました。たとえば次の項目です。
未利用食品を「食の支援団体」などに提供する努力義務
賞味期限の年月表示化や延長の工夫
納品期限の緩和(1/3ルールの見直し)
発注の早期化による上流工程(製造側)の廃棄抑制支援
これらは、以前から行政・業界団体で検討されていた動きが、ついに省令レベルで法定化されたことを意味します。
今後は、こうした取組が「努力目標」ではなく、“遵守すべき基準”として審査や報告に反映されていく見込みです。
情報開示の強化 ― 「見える化」から「評価」へ
新方針では、食品関連事業者に対し、未利用食品の提供量や食品リサイクルの実績を有価証券報告書や統合報告書などで開示する努力義務が課されました。
さらに、政府は優良事業者の公表制度を新設予定としています。
従来の「届出・報告」型から、企業の社会的評価を伴う「認定・公開」型へ。
つまり、リサイクルの取組が“企業価値”として問われる時代が始まります。
アーステクノとしては、こうした情報開示が進むことで、「単なる処理コストの削減」ではなく「地域資源を活かす企業戦略」としてリサイクルを位置づける企業が増えることを期待しています。
再生利用の目標と方向性 ― 中小企業・自治体の連携が鍵に
新しい基本方針では、食品製造業・小売業・外食産業に対して再生利用率の新目標値が設定されました。
業種 | 2029年度までの目標再生利用率 |
食品製造業 | 95% |
食品卸売業 | 75% |
食品小売業 | 65% |
外食産業 | 50% |
さらに、自治体が地域循環の中心的な役割を果たす方針も明記されました。
優良事例の共有や情報提供、100t未満の中小事業者への意識啓発、食品廃棄ゼロエリアの創出、外食産業向けマニュアルの普及などが推進されます。
アーステクノとしても、「自治体 × 地域企業 × 再生利用事業者」の三位一体モデルの形成を支援し、蒸気乾燥や有機物分解による脱水処理などのオンサイト再資源化技術を通じて、地域内完結の仕組みを広げていく所存です。
今後の展望と私たちの役割
この改定で示された方向性は、「食品廃棄物をどう減らすか」から「資源をどう価値化するか」へと明確に軸足を移しています。
アーステクノは、現場で実際にリサイクルループを設計・実装する立場から、法制度に沿った取組を実行可能なかたちで伴走支援し、地域資源を価値ある製品(肥料・燃料・飼料)に変える支援を続けてまいります。
法の改定は、企業にとって新たな負担でもありますが、同時に“地域が主役となる循環経済”を築く大きな機会でもあります。
おわりに ― 2030年、その先へ
食品リサイクル法の新方針は、「未来をつくる実務者」へのメッセージです。
現場の努力が正しく評価され、地域に循環が生まれる社会へ。
私たちアーステクノは、その橋渡し役として、“再生可能な社会基盤”を現場から支える企業であり続けたいと考えています。
▶ 次回予告
今回の法改正により、「小規模事業者や外食産業、スーパーやモール等の小売店舗でも現場で完結する資源循環」が求められるようになりました。
アーステクノでは、従来の課題を解決する小規模事業者向けの新しいオンサイト処理システムの導入支援を進めています。
▶ 詳しくは次の記事「小規模事業者でも実現できる“現場完結型リサイクル”とは?」をご覧ください。
参照元:
農林水産省HP ・食品リサイクル法に基づく新たな基本方針の概要(令和7年3月公布) https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/index-40.pdf
環境省HP ・食品リサイクル法に基づく新たな基本方針等の見直しについて(令和6年6月) https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000234923.pdf


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